物理学者と素粒子好きのみなさんとの、ILC(リニアコライダー)にまつわる対話集。
好奇心のおもむくまま話はいろいろなことろに、飛んでいきます! はてさて、素粒子物理研究の一端をここで垣間見る見ることはできるのでしょうか?
▼はじめのごあいさつ
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広島大学准教授。スタンフォード線形加速器センターへて、広島大学へ。リニアコライダーでは「レーザーと電子ビーム」をキーワードに光子光子衝突や偏極陽電子源の開発を行っている。小学校のときは剣道場へ通い、中学・高校ではサッカー部だった。今でも週2回のスポーツジム通いは欠かさない。
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バレエ評論家。第4回・5回日本ダンス評論賞入賞。好きなものはバレエと猫。著書に『「星座」になった人 芥川龍之介次男・多加志の青春』(新潮社)がある。
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高エネルギー物理学実験を楽しんできたが、1年半前に KEKを定年退職して現在は名誉教授に。05年には木原元央氏と共著にて『リニアコライダー 素粒子の謎に挑む最強の加速器』(技術経済研究所)を刊行。
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2008年07月03日
僕が会ったノーベル受賞者: Steven WeinbergⅡ
皆様
ハーバードでは 5 年間ほど
“Relativistic Quantum Mechanics” ( 相対論的量子力学 )
という大学院の講義を受け持っていました。
最初生徒数は 3 ~ 4 人でしたが、
5年間のうちに 20 人を超えるまでになりました。
で、講義録を本にしてほしいという要望が生徒や研究者からあり、
場の量子論の教科書を書くことになりました。
( ほぼ完成しました、もう少しです。 )
教科書を書くうえで非常に参考になったのが
Weinberg の“The Quantum Theory of Fields Vol. 1,2”Cambridge Press
( 場の量子論 )でした。
でも、一つ腑に落ちない事がありました。
ちょっと難しい話になって恐縮ですが、
粒子の場というのは、
いろんな運動量をもった粒子と反粒子を
生成したり消滅したりする演算子の寄せ集めで出来ています。
さて、この粒子の場に、
粒子と反粒子を入れ替える演算“C”を施してやると、
一般には、いろんな運動量をもった粒子と反粒子が
バラバラの位相で粒子-反粒子反転をするんですね。
それが、いろんな粒子の間の反応を考えてやって、
その反応が“C”を施してやっても
まったく変化しないと要求してやると、
このいろんな位相がきれいにそろう。
ところが、Weinberg の教科書では
そこがどうも短絡的になっているので、
僕が何か見落としているのかと思い、
直接 Weinberg にメールで聞きました。
それが、計 10 通くらいのやり取りになり、
興味がある他の理論家が CC してくれと頼み、
公開討論、と言うと大げさですが、
そんなものに発展しました。
結局、Weinberg の教科書では、
「 ある特定の反応を仮定するのは暗黙のうちの了解である。 」
という感じで、かなりうやむやに終わりました。
その後、ある講演会で Weinberg に会ったとき、
「 あの、問題、はっきり判りました。 」と言うと、
「 そうか、良かった、良かった。 」
と返ってきました。
興味のある方は、僕の教科書 8 章
http://www.awa.tohoku.ac.jp/~yhitoshi/particleweb/partic3.html
と比べてみてください。
山本均より
2008年06月30日
僕が会ったノーベル受賞者: Steven WeinburgⅠ
皆様
さて、ハーバード でのノーベル賞素粒子論物理学者といえば
Steven Weinberg と Sheldon Glashow ですね。
弱い相互作用と電磁相互作用を統一し
現在「 標準理論 」と呼ばれているものの基礎を作りました。
僕が ハーバード にいたのは
助教授と准教授として1991年から 8 年間。
その間、Sheldon Glashow が教授として、ずっといました。
Steven Weinberg はテキサス大学オースティン校に
移ってしまっていましたが、
ハーバード客員教授として部屋も持っていて、
ときどき現れていました。
連中は理論、僕は実験で、建物も違いましたが、
理論で判らないことがあると
よく向こうに出向いて、連中を煩わせていました。
あるとき、Weinberg がたまたま来ていて、
お昼時に Weinberg と Glashow と 僕とあと 1 ~ 2 人で
ファカルティー・クラブ( Faculty Club ) に
行こうということになりました。
ファカルティー・クラブ は大学のレストランで
日本の大学のものとは比べ物にならないくらい高級です。
ネオ・クラシックな建物で
壁にいかめしい油絵がそこら中にかかっている部屋で
三ツ星クラスの料理が出ます。
となりが北米で唯一の Le Corbusier の建築と言われる
カーペンター視覚芸術センターというのも面白い。
そこでランチを食べながら
ポスト・モダーンとはなにかとか、議論しているうちに
宇宙の話になり、超対称性の話になりました。
で、「 超対称性理論を信じますか 」と聞いたのですが、
その答えをいまもはっきり覚えています。
「 自己矛盾のない理論は実在する 」
と言ったんですね。
で、どういう意味か問いただすと、
「 実際に自然を説明するかどうかは別にして実在する 」
と答えました。
さすがは理論家だなあと思いましたね。
自己矛盾のある理論は理論として成り立たない。
そして、自己矛盾のない理論を造るのは実に大変な事で、
理論家はそれに毎日四苦八苦する。
で、ともかく自己矛盾のない理論ができれば、それで万々歳。
理論は自立することになる。
だから、たとえその理論が、標準理論を超える理論にならなくても
宇宙のどこかにその理論が説明する
現象が存在するはずだと考えているようでした。
実は、Weinberg とは、その後一悶着あるのですが、
それは次回に…。
山本均より
2008年06月26日
天満様
日経サイエンスの記事
「 動き始めた国際リニアコライダー構想 」 は
SCIENTIFIC AMERICAN 誌の特別記事
“ Building the Next- Generation Collider”
の日本語訳ですが、
国際リニアコライダー設計チームの長である
Barry Barish に SCIENTIFIC AMERICAN 誌から
声がかかったのが 2006 年春頃、
その夏に Barry からドイツ人で加速器屋の Nicholas Walker と僕に
「 一緒に書かないか 」と言ってきました。
なぜ僕にお声がかかったかというと、
リニアコライダーの物理と測定器の国際組織
( World Wide Study と呼ばれている )の
アジア代表ということもありますが、
実は、 Barry は僕の博士課程の指導教官だったんですね。
そうして始まりましたが、
皆忙しいのでなかなか執筆が進まない。
僕の担当は主に測定器だったんですが、
記事をご覧になればわかるように、ほとんどが加速器の話です。
書く量が少ないとかえって始めにくいもので、
皆さんの足を引っ張っていました。
日経サイエンスは
SCIENTIFIC AMERICAN 誌の記事の日本語訳を核として
一応独自の編集をしている科学雑誌ですが、
「 リニアコライダーの話は面白い 」というので、
日経サイエンスにも載ることになりました。
それで、前回の怠惰の埋め合わせをすべく
しっかりと日本語訳の仕事をこなしました。
今年 5 月に出版されたとき、
Barry から声がかかってから 2 年近くが過ぎていました。
さて、ハーバード での Weinberg や
Glashow の話ですが、
長くなりましたので、
それは次の書簡で。
山本均より
2008年06月22日
山本先生
はじめまして。天満でございます。
『 日経サイエンス 5 月号 』 に共同執筆されていた
「 動き始めた国際リニアコライダー構想 」 を
拝読いたしました。
記事の原題名は、“ Building the next-Generation Collider” で
SCIENTIFIC AMERICAN に掲載されたものを
山本先生が日本語に翻訳された特集でした。
私が今まで読んだ中で、最もわかりやすく
また ILC の全体像が浮かび上がるように
書かれていた記事だと思います。
さらに「 LHC と ILC - それぞれの役割 」 が記されていたことも
ふたつの大きなプロジェクトのつながりを知ることができて
勉強になりました。
山本先生は、ハーバード大学で教鞭をとっておられたそうですね。
ハーバードには、ワインバーグ博士とかグラショウ博士など
現在の素粒子論の基礎を創ったノーベル賞物理学者が
いらしたと聞いております。
先生は、博士たちにお会いになられましたか。
天満ふさこより
2008年06月18日
皆様
こんにちは。
物理往復書簡に参加させていただく事になった
山本です。
このような形式は全く初めてなので
いろいろとぎこちないところもあるかと思いますが、
お手柔らかに、よろしくお願いします。
大学院から渡米し、20 年以上
カリフォルニア、イリノイ、マサチューセッツ、ハワイを
転々として、 7 年ほど前に日本(仙台)に帰って来ました。
これまで、ひと所にいた最長は
マサチューセッツ州ケンブリッジ市の 8 年ですが、
あと 1 年で、仙台が追い抜きます。
向こうでの話なども含めて
皆さんに楽しんでいただければ、と思います。
山本均より
2008年06月15日
天満様
ごくろうさま。
大物の新人を獲得できたわけで、うれしいですね。
経歴から言って、豊富な話題、国際的なぐっと広い観点、…
を持ち込んでくれると期待しています。
岩田正義より
2008年06月13日
みなさま
このたび、この「 物理屋往復書簡 」に東北大学教授の
山本均( やまもと ひとし )先生が
メンバーとして加わってくださることになりました。
≪ 山本均先生の Profile ≫
カリフォルニア工科大学大学院に留学し
スタンフォード線形加速器センター、フェルミ研究所等で
素粒子実験に携わる。
ハーバード大学准教授、ハワイ大学教授を経て現在東北大学教授。
"ILCの物理と実験に関する国際組織" のアジア代表を務めている。
趣味は茶道、ピアノ、インラインスケートなど。
これから、写真などを整えていきます。
みなさん、楽しみにしておいてください。
天満ふさこより
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