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素粒子というのは、この世界に存在するあらゆる物質を形作る最も小さな粒子であることを以前のコラムで読んで貰いました。
でも、例えば積み木をいくら積み上げていったとしても、軽く人間が力を加えただけで積み木はすぐに崩れてしまいます。
これは、積み木同士をくっつけるための糊が付いていないからです。同じように、
素粒子もお互いをくっつけるための糊が無ければすぐに崩れてしまい、僕等の身体を形作ることは出来ません。
従って我々が素粒子を考えるときには、必ず糊の役目を果すものと一緒に考えなければならないのです。
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実際に素粒子の間に糊が存在していることはありません。そもそも糊だって物質なので、素粒子から作られています。
では一体何が糊の役目を果しているのでしょうか?それを考えるために、二つの粒子が糊でくっついているような状況を考え、
糊の本質的な役割を考えてみましょう。糊というのは、自身が持っている粘着力で、二つの粒子が離れないように結び付けているものでした。
つまり、本質的には二つの粒子がくっついて離れなければ、それは糊があるのと同じだということになります。
では、糊が無いのにくっつくことってあるのでしょうか?ここで、磁石を思い出してみてください。鉄に磁石を近づけると、
鉄は磁力という力によって磁石に引き寄せられ、最後には磁石にくっついてしまいます。糊が無くても、
物質同士がくっつく代表的な例と言えるでしょう。この他にも似たような例はいくつか挙げられます。それらに共通しているのは、
二つの物体の間には引力(引きつけあう力)が働いているということです。
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ではここで、力とは何か考えてみましょう。僕も含め皆さんは日常生活でよく、「(物に)力を加えたら動き出した」とか
「(物に)力を加えられたから動いてしまった」などと言いますよね。日常的に「力」というものを、
さも実際に直接眼で見たかのように話しているはずです。でもよく考えてみてください、僕等はただの一度も「力」というものを
見たことが無いはずです。この見たこともないはずの「力」というものが存在するということを、我々は何故知っているのでしょうか?
僕等が日常生活で「力」が働いたと認識するとき、それは「力が加えられた物体が動いた」ときに他なりません。もっと具体的に言えば、
動いている方向や速さ(これらを運動状態と呼ぶ)が変わることで、僕等はその物体に「力」が働いたのだと認識することが出来るのです。
従って「力」が働いているということは、物体の運動状態を変化させる何かしらの現象が起こっていると考えられるのです。
働いている力が引力の場合は互いに近づくように運動状態を変化させ、斥力(反発しあう力)の場合は互いが離れるように
運動状態を変化させる、そのような現象が起こっているのです。
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それでは我々が、2つの粒子間に力(引力でも斥力でも)が働いていると認識するとき、それらの粒子の運動状態を変えた
原因となっている現象は何なのでしょうか?実はこの「運動状態を変える原因」、すなわち力(電気や磁気の力など、
この世界に存在する基本的な力)を粒子のキャッチボールで説明したのが、現在の素粒子の理論と言えます。下の図がそれを表しています。
左から右に向かって2つの電子が近づきながら飛んでいるとき、上側の電子が途中で光子という粒子を下側の電子に向かって放り投げ、
それを下側の電子が受け取っている図です。光子を放り投げた上側の電子はその反動で向きと速さを変え、同じように光子を受け取った
下側の電子もその反動で向きと速さを変えます。向きと速さ、つまり運動状態が変われば、そこに「力」が働いたと考えることが出来るのは
上述した通りです。今は電子と電子が近づいていった場合を考えたので、これは斥力が働いている場合の図でした
(負の電気を持った物同士は反発することを思い出してください)。引力の場合も数学上同じように表せるのですが、
図示するのは不可能なので、今回は斥力の場合のみを図示させて貰いました。
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このようにして、粒子をキャッチボールすることで、素粒子はくっついたり反発したりしながら様々な物体を形作っている
と考えることが出来るのです。「考えることが出来る」と書くと、「誰も確かめていないそんな理論を信用しているのか!?」
と言われそうですが、実はこのような考え方が正しいことは実験できちんと確かめられています。自然科学とは、宗教のように信じるか
信じないかではありません。仮説を立てた後は必ず実験で正しいかどうかを確かめる必要があります。そして実験から仮説を肯定する
結果が得られたとき、初めてその仮説は正しかったのだと言うことが出来るのです。素粒子の世界でのこの粒子のキャッチボールも、
実験できちんと確かめられているからこそ、科学者は安心して自らの研究に、このような考え方で作られた理論を使うことが出来るのです。
どのような実験で確かめられているのか、それはそう遠くないうちにこのコラムで触れさせて頂きます。次回はこの粒子のキャッチボールを
踏まえて、ボソンとフェルミオンの違いを見ていきますのでお楽しみに。それではまた。
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(文・伊藤英男 東京大学宇宙線研究所)
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